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彼の研究室は、威風堂々聳える煉瓦造りの、荘厳な中世ヨーロッパの教会を彷彿とさせるメインキャンパスを通り抜け、渡り廊下を300メートルほど歩き、パリのオペラハウスを模した豪華な講堂をぐるりと回ったところにひっそりと佇む、蔦とヒビの這う無機質なコンクリート2階建ての地下にあった。
地上部分の用途は、倉庫、物置、肝試しのメイン会場。人の出入りはほとんどなく、窓ガラスは割れ、ドアは蝶番が外れて斜めに傾(かし)いでおり、全ての部屋の四隅には、まるで結界のように蜘蛛の巣が張られている。
建物の入り口である引き戸でさえレールが歪み、常に84センチ開いている。開いた状態で無理やり鎖を通しセキュリティ対策しているが、べろんと垂れ下がった南京錠が悲しい。
鎖の下をかいくぐり、入ってすぐのところにある階段を一番下まで降りきった左側のドアが、彼の王国、未来科学研究室であった。
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