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立花康太は自分の部屋で彼女の画を描いていた。
なめらかな首筋、豊かな胸のラインを描いている時だった。
居間にある電話が鳴った。
小走りで向かって受話器を取る。
「はい。もしもし」
「あっ。立花さん」
この声は康太の恋人の友達である安奈だ。
「芹菜が」
「芹菜がどうした?」
安奈の声調が妙だ。
震えている。
「死んじゃった」
安奈のすすり泣きが聞こえた。
だが初めて芹菜の死の悲報を受けた後から出る涙ではない。
「どうしよう」
「冗談じゃないのか?」
「あきちゃんが言ってたからほんとだと思う」
康太はあきちゃんが誰なのか全く知らなかったが、事態が深刻なのは確かだ。
康太の受話器を持つ腕が自然と垂れ下がっていた。
「どうしたの?」
受話器が軽い悲痛をあげている。
康太の足は新宿駅に向かった。
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