見えない彼女

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朝になっていた。 ホームを十三時間歩き回った。 すでに十八時間以上も駅にいる。 康太は駅内のコンビニで糖分が濃密に入っているカフェオレをがぶ飲みした。 店員が慌てて駆け寄る。 「お客様、勝手に飲まれては困りますよ。レジでお支払いをしてください」 「なんだと。こっちは喉がカラカラなんだ。うせろこの野郎」 明らかに康太はそこらのチンピラと変わらない腐れ野郎に成り下がっている。 店員は酔っ払いへの対応マニュアルに従って整然と述べた。 「お支払い頂けない場合はすぐそこに交番がありますから警察の方にお客様を引き渡すことになりますのでどうか穏便に済ませましょう。ね」と康太の肩を軽く揺すった。 「離せ」 肩を回して突き放すと店員は後ろに仰け反り、棚からクリームパンが四つ落ちた。 「何するんだ」 店員が怒りの表情で康太に噛みつく。 まあ当然の反応だ。 普通の人間にとってはだが。 康太は左腕に強烈な痛みを感じた。 店員が我を振り返らずに爪を立てて腕の肉を掴んでいた。 こいつの先祖か前世はワシだな。 康太は口元に馬鹿にするような笑みを浮かべた。 「おまわりさん!おまわりさん!こっちに来てください」 店員の手招きに気づいた警官二人がドアの両側の壁面が黒ずんでいる交番から走り出てきた。 一人はメガネをかけ、もう一人はサングラスをかけていた。 メガネをかけた警官が康太に急接近してきた。 「いけないよ。お金払わずに飲むなんてさ。見たところ」 更に近づいて鼻を動かした。 「酔っ払ってるわけでもなさそうだ」 「カフェオレを飲んだんです。この人は」と店員が口を挟んだ。 「わかってますよ。ただここに来る前にどっかで酒でも飲んだのかと思ってね」
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