友達のジェン

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 キーンコーンと、教室にチャイムの音が響く。みんなが待ちに待っていた放課後の始まりだ。僕も、もちろんこの時間を楽しみにしていた。 「明日は体育あるから、体操服忘れないようになー」 「はーい」  担任のサトウ先生は、そう言って教室から出て行った。僕も帰ろうと、教科書やノートをランドセルにしまう。そして、帰ろうと椅子をひいたときにマエダ君が声をかけてきた。マエダ君は、クラスで一番スポーツができる。 「今日、南公園でサッカーやるけど来る?」  僕は運動が苦手だ。それに、放課後の時間にやりたいことがあるので僕はマエダ君のお誘いを断った。マエダ君は残念そうな顔をして立ち去った。このやりとりは毎日行われていて、僕の答えがイエスになったことはない。  楽しい放課後の時間もそう長くはない。僕は、急ぎ足で下校した。 「ただいまー」  靴を脱ぎ散らかすとお母さんに怒られるので、ちゃんと整えてから家に上がる。 「おかえり。今日も水族館に行くの?」 「うん!」  洗濯物を畳んでいたらしいお母さんが聞いてきたことに、僕はすぐ答えた。 僕の住む街には、小さな水族館がある。水族館といっても、魚の数は少ないし、イルカなんてものもいない。本当に小さな小さな水族館。でも、僕はその水族館が大好きだった。だって、僕の友達がいるんだもの。  ランドセルを置いて、お出かけ用のバッグを肩にかける。 「パパのお仕事の邪魔しちゃダメよー」  お母さんが玄関までやってきた。 「分かったー」 「いってらっしゃい。気をつけてね」 「いってきまーす」  僕は意気揚揚とした気持ちで玄関の戸を開けた。そして、駆け足で水族館へと向かう。  季節は夏の強い日差しが弱くなってきた、ちょうど快適な気候だった。それでも急ぎ足で進んでいると暑くなってしまう。けれど、僕の足は止まらない。  走っているうちにだんだんと潮の香りが強くなってきた。次の角を曲がると海が見えてくる。水族館に行くのが一番の楽しみであるけれど、海が見える瞬間も僕は好きだ。  車に気をつけて、交差点を曲がる。 少し西に寄ったお日様がギラギラと海に反射して輝き、心地の良い波の音が耳をつきぬける。五感全てが海という自然の素晴らしさを訴えているような感覚だ。  この景色を見ると自然と気持ちが高まってくる。目的地の水族館ももうすぐそこだ。
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