友達のジェン

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 大きなドーム型をした建物。クラゲとウミガメの絵が描かれた門のように配置された看板。僕の目的地に到着した。ちなみに、この水族館にウミガメはいない。 「こんにちは」  受付のお姉さんに挨拶する。ここの水族館で働く人とはみんな顔見知りだ。 「タケル君、こんにちは。今、お父さん呼ぶからね」 お姉さんはにこっと笑ってから、電話をとった。水族館の電話はすごく、ボタンを一回押すだけで相手に繋がるようだ。  お姉さんが電話でお父さんを呼んでくれている間、受付窓口に貼ってあるものを眺めてみた。「子ども800円、大人1500円」と書かれたシールがガラスに貼ってある。去年の僕は読めなかったけれど、今ならすらすらと読める。ちょっとばかし誇らしい気持ちになった。 「タケル!」  水族館の入口から声がかけられた。お父さんだ。家にいるときよりも、お仕事の制服を着たお父さんはかっこよく見える。 「来たよー」 「ほんとに、タケルはここが好きだな。事務所にいるから、帰るときに声かけるんだぞ」 「うん。分かった」 「他のお客さんに迷惑はかけるなよ」 「うん。大丈夫だよ」  暗い雰囲気の中、青く光る証明が幻想的な空間を作り出している。そんなキレイな中に大小いくつもの水槽がならんでいる。でも、僕は見向きもせずにずんずんと順路を進んでいく。そして、お目当てのガラスケースが見えてきた。 「ジェン」  僕は友達の名前を呼ぶ。  すると、ガラスの向こうで思い思いの動きをしていたペンギンたちのうちの一羽がてくてくと今にも転びそうな歩き方で僕の元へとやってきた。正確には、ガラスを挟んでだけれど。 「ジェン、元気にしてたかい?」  そう尋ねると、まるで僕の質問に答えるかのようにクァーと鳴いた。薄く開いた黒い目は、じっと僕を見つめている。最初の頃は、その変わらない瞳にどんな感情が宿っているか分からなかったけれど、今では笑っているのか悲しんでいるのか分かるようになってきた。  僕の友達、ジェンはペンギンである。ジェンツーペンギンという種類らしいので、名前はジェンと僕が勝手に名付けた。初めてこの水族館に来た時から、僕のもとへやって来て、僕がなにか話すといつも鳴き声で答えてくれた。その時から、ずっと友達だ。
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