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ジェンツーペンギンは目の上から頭にかけて白色の毛になっているのが特徴だが、ジェンはそのラインが横から見た時にハートマークのように見えるので、他のペンギンたちの中でもすぐに見つけられる。もちろん、ジェンが僕を見つけるとすぐに寄ってくるのでそんな必要はないのだけれど。
「今日はね、学校で漢字のテストがあったんだ」
「クァー?」
「それでね、百点とったんだよー」
「クァー! クァー!」
ジェンはフリッパーと言われる羽のような部分を使ってパチパチと拍手のような動作をした。
「ありがとう、ジェン」
いつも、ここへ来ては日常にあったささいな出来事をジェンに話す。ジェンはまるで人間のように、いろんなリアクションをとってくれる。今日のようにめでたいときは、フリッパーを叩いて拍手のように見せ、悲しい話のときはフリッパーで目の下をこすって泣いているかのようにみせる。そして、おもしろおかしい話をしたときは、フリッパーを床に叩いて笑っているかのような行動をしてくれる。
だけど、たまにこんなことも思う。
ジェンと言葉でお話したい。
もし、これが叶ったらどれだけ楽しいだろうか。一日でいいから、一時間でもいいから、ジェンが言葉をしゃべれるようにならないかな。神様、お願いします。
「明日は、体育なんだよね……」
「クァ~」
「でも、やるだけやってみるね」
「クァークァークァー」
まるで、応援団のようにフリッパーを前に横に動かしてくれる。とても可愛い動きだ。
ジェン、ありがとう。苦手な体育だけど、ちょっとばかし元気が出たよ。友達の応援ほど励みになるものはない。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、もうそろそろ帰らないといけない時間だ。
「また、明日ね」
「クァ」
ジェンも寂しそうな表情だ。
「バイバイ」
ジェンはフリッパーを振って、僕を見送ってくれた。お父さんに挨拶して帰ろう。そして、また明日もジェンに会いに来よう。
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