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翌日、僕の苦手な体育の時間がやってきた。早く終わらないかな。
「じゃあ、今日は走り幅跳びをやってもらうぞー」
サトウ先生は体育の時間が一番いきいきと教えているように思える。
「いいか、ここの白線から走ってきて、砂場の前にある白線からおもいっきりジャンプするんだ」
そう言って、サトウ先生は実際に跳んでみせてくれた。ほとんど、砂場の向こう側まで跳んでしまって、みんなから歓声の言葉がでる。大人はさすがだ。
そして、一人ずつ跳んで記録をとることになった。
昨日ジェンが応援してくれたし、僕にだって跳べるさ。頭の中に昨日の光景が浮かんで、少しやる気が出てきた。僕に順番が回ってくる。白線の前に立って一度呼吸をしっかりととった。
「ニシミヤ、いいぞー」
先生の合図と同時に走り出す。一生懸命に手を振り、足を振り、そして……結果はクラスで一番ビリだった。ごめんよ、ジェン。やっぱり、僕に運動はダメみたいだ。
来週にも、もう一回計測を行うので各自練習するようにとのことだけど、どうせまた僕が一番跳べないだろうな。もう、跳ぶ前のやる気は完全に消沈していた。
この日の帰りの足取りは重かった。
足を引きずるように、下を向いてトボトボと歩いていると「タケル君」と、声をかけられた。誰の声なのか分からないけれど、どこか聞いたことのあるような気もする不思議な声だった。
ゆっくりと顔をあげる。
「タケル君、僕、話せるようになったよ」
これは夢だろうか。僕はまだ暖かい布団の中にいて、ずっと思っていた願いを夢の世界で叶えたということだろうか。それでも、ものすごく嬉しい。
いつもの学校からの帰り道の風景、その真ん中に一羽のペンギンがいた。
僕は、横からまわってハートの目印を確認することなく、そのペンギンがジェンであるとすぐにピンときた。
「すごい、すごいよジェン!」
僕は嬉しくて嬉しくて、ジェンのもとまで走り、抱きかかえた。お日さまに照らされたジェンの姿はとても新鮮で、かわいさやかっこよさが滲みでている。
「僕も嬉しいよ、いつもずっとタケル君と話したいなって思ってたんだよ」
「ほんと! 僕もだよジェン!」
ゆっくりと、ジェンを地面に下ろした。
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