不死の王

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結果から言うと、俺は天に召されなかった。 目の前でブンブン鎌を振り回しながら俺を攻撃している死神もかなり驚いている様子である。 つまりは俺のような上位アンデットのレイスともなれば、死神の攻撃など受けることも無いと言うわけか。 このアビリティの『物理無視』とか言うのも関係してたりするのかな…? 成仏できなかったのは何だか微妙な気持ちだけど。 まあとりあえず覚悟しろよこの死神風情が。 この俺に攻撃しようなどと考えたのが運の尽きだったな! そう息巻いて思いっきりぶん殴ってみたのだが。 「!?」 俺の鉄拳は死神には当たらなかった。 と言うより通り抜けた。 そうだ。 相手の攻撃が当たらないなら、そもそも俺の攻撃も当たるわけがない。 当たり前のようで見落としがちなミスである。 しかし、何故か目の前の死神はそれっきり動こうとしない。 あんなに焦りながら鎌を振り回していたのに、急に全ての動きをピタリと止めている。 まるで時間が止まったように、鎌を振り上げたままその身体をピクリとも動かさない。 「これはどうなってるんだ…?」 「恐らくは…、王が自ら奴の生気を吸いとってしまわれたのかと。」 「なん…だと…。」 まさかさっきのパンチだけで死神の生気を吸いとってしまったのか。 そう言われると何だかさっきより身体に力がみなぎっている様な気がする…。 「やはりその様ですな。」 一人の骸骨が死神に少し触れると、ガチャガチャと音を立てながら死神がバラバラと崩れ落ちた。 うわぁ…アイツ本当に骨だけだったんだなぁ…。 死神なんて言っても中身スカスカじゃん。 おっと今はそんな呑気なこと言ってる場合じゃない。 触っただけで…、いや通過しただけで生気を吸い取ってしまうってどうなの? 誰にも触れないどころか物にも触れることができないってことにならないか? そうなるとますます俺がこんな身体にまでなって生まれ変わってしまった意味って何なの…。 何にも触れない死霊なんて、いないのと同じじゃないか…。 と言うか命を奪う事しか能が無い死霊ってどうなの? いやまてまて。 何も全てのモノや生き物に触れないと決まった訳じゃない。 重力もちゃんと作用してるみたいだし。 足だって地面に着いてるんだ。 そうじゃなかったら俺今頃この星の反対側だよ。
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