空っぽだったあの日

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美味しかった。 なんの具も入ってない、ただ塩で味つけただけなのに、今まで食べたどんな物より美味しかった。 ーーありがとう、女将さん。 貴女と、ライチョウに助けられました。 私は、スマホを取り出すと、周りの景色を写し続けた。 写して、それでも足りなくて、あちこち歩いて目に焼き付けた。 二度と、忘れないように。 二度と、馬鹿な事を考えないように。 時間ギリギリまで粘って、私はケーブルカーに乗り、この地をあとにした。 その後、私がこの地を訪れた事は二度となかった。
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