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「国民栄誉賞を、授与いたします」
「ありがとうございます」
あの立山から五十年の歳月が流れた。
下山した後、家に戻った私は、すぐにバイトを始めた。
少ない収入の中、コツコツ貯めたお金で一眼レフカメラを買った私は、それであちこちの風景を撮影した。
お金なんか、毎日の生活と旅費で全て消えたから、全部独学。
自分で試行錯誤して、必死に覚えた技術で撮影して、ようやく撮れた一枚を手に、私は雑誌社を回った。
『カメラマンとして雇ってほしい』
経験ゼロ、やる気だけの素人の私を雇うとこなんてほとんどなかったけど、辛うじて、小さな雑誌社が臨時で使ってくれた。
半年に一回あるかないかのカメラマンの仕事。
それでも、それを繰り返してるうちに、私の事をかってくれる人が現れて。
それからは、バイトを辞めてカメラマン一筋で生きてきた。
少ないチャンスをものにして、一歩ずつ進んできた私。
数年前には、念願だった日本の風景を撮り歩いた写真集の出版がかない、それは世界中の人の手に渡った。
これまで、外国人はおろか、日本人ですら知らない、いや、気にしていなかった風景を撮り集めたもの。
私が、あの日から撮影し続けた日本。
日本の魅力を発信し続け、訪日観光客を大幅に増やしたとして、ついには、日本人として最高の栄誉ともいえる『国民栄誉賞』を授賞した。
「未来ある、若者達に何か言ってあげてください」
総理大臣が温かな笑みを浮かべて、語りかけてくる。
そう、私は彼らに言わなければならない。
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