空っぽだったあの日

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後日、彼から慰謝料として、かなりまとまった額が私の口座に振り込まれた。 その少し後に退職金も手にした私は、当面の生活に困ることはなかった。 しかし、自堕落的な生活を続ける毎日では、職安に行く気力はおろか。 家の外に出る元気すら起きず、家の中に閉じ籠る日々。 自分でも分かってる。 このままじゃダメだって。 だから、私は大分少なくなった貯金を卸して、旅に出た。 目的地は、かつての親友が『あの景色は忘れられない!』と、絶賛していた立山はアルペンルート。 どんなところかは全くもって知らない。 ただ、"とんでもない山の中"ぐらいしかない知識。 それでも、私は行く。 行って、もし何もなければ、そこで身を投げる覚悟で……。
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