カフェ店員と恋、見つめ直しました

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◇◇◇◇◇ 「中山くん、この後ご飯行こうよ」 相沢からの突然の誘いに「いいよ」と即答する。朱里さんに連絡する勇気も出ない俺は予定も何もなかったから。思えば相沢と二人で食事するのは初めてだ。いつもは複数人で行くことばかりだった。 店の鍵を締め、事務所で着替えて駅の向こうまで歩いた。 「どこにしようかな?」 「この時間ならどこの店も空いてそうだな」 「ここは?」 相沢は海鮮居酒屋を指差した。俺の返事も聞かず相沢はさっさと店に入っていった。 サワーをちびちびと飲む俺に対して相沢は次から次に酒を注文しては飲んでいく。 「ちょっと相沢、大丈夫か?」 「平気平気。私酔わない体質だから」 確かに相沢はどれだけ飲んでも本人の言う通り酔っているようには見えない。バイト仲間で飲みに行くときも、相沢が酔っぱらったことはなかった。 「相沢って具体的にはいつまで店に在籍するの?」 「うーん、卒業ギリギリまではいたいかな。3月まで」 相沢は短大を卒業し、春から正社員として就職することが決まっている。一緒に働けるのはあとわずかだ。 「寂しくなるね」 「そうだねー」 カフェに同じ時期に入り研修を一緒に受けて、怒られて励まし合って今がある。 「中山くんはまだ少しいるよね?」 「俺はずっといるよ。この会社に入ろうかって思ってる」 「そうなの?」 「うん」 大学を卒業したらカフェを運営する会社にそのまま正社員として入社したいと以前から店長に相談はしていた。接客は好きだし、カフェでの仕事は楽しかった。アルバイトと正社員とでは仕事内容も責任も違う。店長を見ていると異動もあるし大変だろうとも思うけれど、可能性があるのならこの会社でやっていきたいとだいぶ前から願っていた。
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