カフェ店員と恋、始めました

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「お前らめちゃくちゃ分かりやすいだろ」 呆れた声にそんな分かりやすいのかと焦ってしまう。 「幸せそうで何よりです」 「っ……その言い方やめて……」 山本にからかわれると恥ずかしいやら腹が立つやらでそれ以上中山くんの話題をしたくなくなってしまった。 『公私混同しないの! 仕事中に手を振らない!』 会社を出てから中山くんにそうLINEを送る。手を振ってくれたのは嬉しいのだけど、店員がお客さんに手を振るなんて他の従業員にも他のお客さんにも変に思われるのではないだろうか。 「はぁ……」 もうすぐ駅に着いてしまう。カフェに近づく度に落ち着かない。中山くんの存在が嬉しくない訳ではないけれど未だに会うのは緊張する。 カフェの前を通ると、横目で見た店内にはもう中山くんの姿はなかった。今日はもう終わって帰ったのだろうか。 「朱里さんと会えたら嬉しくて手を振っちゃうんですよ」 突然後ろから聞こえた声に驚き振り返ると、目の前に中山くんが立っていた。 「えっ! びっくりしたぁ……」 「今ちょうどバイト終わったとこなんです。そんで朱里さんに連絡しようかなって思ったら目の前を歩いてたから」 「お疲れ様」 無邪気な笑顔を向けてくれて悪い気はしない。それに自然と私の呼び方が『橘さん』から『朱里さん』に変わっている。急激な距離の詰め方に嬉しいやら照れるやらでそのことに触れられない。 「朱里さん、ご飯いきましょう」 「え、今から!?」 「だめ……ですか?」 「ううん……だめじゃないよ」 寂しそうな顔をするから思わず了承してしまう。 「じゃあ」 中山くんは私の前に手を差し出す。
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