カフェ店員と恋、辛くなりました

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「いや、いつもじゃないよ。でも橘には仕事で助けてもらうことが多いから、時々はね」 「そうですか……」 朱里さんと食事に行っても俺に奢らせてはくれないし、多く出したくても割り勘以上は朱里さんが許さなかった。学生の俺に気を遣っているようで心苦しい。それに比べ目の前にいるこの男性は女性に気を利かせて食事や飲み物を奢ることができるのだ。朱里さんは山本さんが買ってきたホットサンドと紅茶をとても喜ぶに違いない。 紙カップを入れた紙袋の中に砂糖とミルクも忘れずに入れる。今の俺には、そんな小さな気遣いしかできない。 「お待たせいたしました」 紙袋を手渡す俺の声は、自分でも驚くほど暗かった。その声音には気にもとめず、山本さんは明るく「ありがとう」と受け取った。 山本さんは相沢にも笑顔を向け「じゃあ、また来ます」と言うと、俺たちに向かって軽く頭を下げる武藤さんと共に店を出ていった。 「今の男の人、どっちもイケメンだったね」 相沢はケーキの予約表にチェックをつけながら「一人はチャラそうだけど」と呟く。 ルックスがよくて、経済力があって、朱里さんの近くにいる……。 朱里さんの仕事は企画が終わるまで詳細を教えられない。だから俺はほとんど仕事内容を把握していない。でも会社での朱里さんは誰かと共同作業があったり、気軽に相談する仲間がいる。俺の知らない一面をあの人たちは知っている。俺はどうやってもその場に立ち会うことは叶わない。 このあと朱里さんが紅茶を飲む姿を想像すると、今すぐ朱里さんのところへ行きたくなる衝動に駆られた。 「嫌になる……」
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