こけ女

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 うとうととしかけた時、私は思わず目を見開いた。  カタカタと、部屋の中で物音がしている。  初めは地震かと思った。でも私自身は揺れを感じない。  布団から体を起こし、音のする方を凝視する。カーテンの隙間から漏れる街灯の明かりが、その正体を照らした。  ……動いている。  こけし達が、動いている。  右、左と半回転しながら少しずつ私の方へ近付いて来る。  これは夢? ううん、夢でも何でもいい。  あの子達の魂が、こけしに宿ったんだ。私の願いが、届いたんだ……!  直後、私は耳を疑った。 『マ……マ……』  喋っ、た……? 『マ、マ……マ、マ……』  母親を……私を呼んでいるの? 「ママならここよ? ここにいるわよ!? さあ、いらっしゃい!」  布団を跳ね退け、まるでハイハイしてくる子供を迎え入れるように手を差し延べる。  そして子供達は、私の指先に触れた。
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