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私は貴族の娘。エルフと呼ばれる種族で、人間より高貴で優秀で、比べるのも失礼なくらいだ。
そんな私は、自分の館を持ち、執事と友人と私で暮らしていた。
「執事」
手を鳴らしながら執事と呼ぶ。しかし誰も反応してくれなかった。
外は豪雨だ。窓に当たる雨の音で聞こえないのだろう。
私は1人、自分で淹れた紅茶を飲み干した。やっぱり私のじゃ駄目かしら?
なんで執事が来ないんだ。何時もならもうここに来て私になにかして来るのだが。
この前なんて死んだふりをして驚かせていたくらいだ。まんまと騙されて笑ってしまったよ。
「今日は休みだったか?」
そうやって自問自答を繰り返す。執事がここに居ない理由を、広い部屋で探す。
「……あ、写真立てが倒れてる」
写真立ては比較的新しく、埃も被っていない。それを手に取り懐かしむ気持ちで見た。
「……ふふ。懐かしいな」
執事の名前は私が付けたんだったな。森で行き倒れているあいつを見つけて……あれ?
私はどんな名前を付けた?
「執事の名前は……」
頭の中で思い付く単語を次々と出してゆくが、名前に該当するものが出て来ない。
「私の執事は……」
「……執事は死んでいるわ」
思考の渦に飲み込まれていると、友人が扉を開けて此方を見ていた。
「何言ってるの?だって昨日だって変な紅茶を淹れて」
友人は首を横に振る。
可笑しいじゃない。だってエルフは長寿じゃない。私よりも歳下のあいつが死ぬわけが。
「彼は人間。寿命が来たのよ」
「……そう」
ずっと側に居るから忘れちゃってたわ。彼は人間で私はエルフ。人間が1人死んでも関係ない。
「ちょっと外に出て来るわね」
そう言って私は外に出た。
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