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もうすぐしたら夏休み。なのに雨ばかりの七月。
今年は早くも台風がやって来て、梅雨からの憂鬱さが消える事はなかった。
期末テストも終わり、後は終業式を待つばかりの毎日。
私と彼女はダラダラしながらも、今年の夏休みこそ有意義なものにしようと互いに誓うように笑っていた。
でも、別に『有意義』といっても真面目に勉強をするわけじゃない。
十七歳の乙女が机にかじりついてカリカリ勉強なんてしてられない。
『有意義』とは『素敵な男性との素敵な出会い』なのは言わなくても当然。
……多分。
もっとも、私も彼女もモテるわけでもないけど。
半分は憧れに近いものなのかも知れない。
もちろん中学生じゃないんだから、ある程度のリアリティは分かってるつもり。
理想はあるけど、理想と妄想の違いくらいは分かってる。
それでも私達は芸能人の名前をならべては、そんな男性との出会いを望んでいた。
ありきたりな毎日。
ありきたりな高校生。
ありきたりな会話。
ありきたりな夏休み。
そう、七月の半ば、私はまだ、そんな『ありきたりな夏休み』で今年も終わるんじゃないかなって思ってた。
後になって、ありきたりな夏休みであってほしかったと、心の奥から思う自分になるなんて……少しも考えてはいなかった。
そう、それから一ヶ月後、私はそれまで待ち受けにしていた画像――彼女から送られてきた『私ら ずっと マブダチ!』とあるパネェ画を削除しなければならなくなる。
そんな事を予想する事もなく、私は彼女とゲラゲラ笑う。
晴れた空だけは夏の色に染まりつつある七月。
二人、制服姿で。
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