258人が本棚に入れています
本棚に追加
それは中学三年の時の話。
普通に普通の毎日。
なのに、それは突然、始まった。
いじめ
はじめはシカトから。
声をかけても誰も逃げるように去って行った。
私は私を責めた。
どこか見た目が変だから?
何か変なこと言ったかな?
流行りにも敏感になった。
話ができるように、できるだけ話題のネタを集めた。
身だしなみにも気を使った。
仕草も注意した。
しかし
シカトは続いた。
そのうえ、いつの頃からか私の教科書やノートに落書きがされるようになった。
一体、私の何が変なの?
理由を考えて、探して、分からなくて、泣いた。
そんな、ある日。
何気なく聞いてしまったクラスの女子たちの会話。
それは私の噂話だった。
「…ってさ、なんか変よね」
やっぱり私は変なんだ。
そうショックを受けたけど、一体何が変なのか知りたくて私は息を殺し耳をそば立てた。
「そうそう!なぁんか妙に“女の子”してるしぃ?」
「いじめられてるの気付いてないとか?」
「それ、天然?」
「あははは…かもね~!」
グッと手をグーにして我慢する。しなきゃ泣きそうだから。
しかし、次の会話を聞いて、私は泣くよりも怒りに似た――いや、失望と呼べる衝撃に言葉を失った。
「でもさ?そろそろ飽きない?」
「そうよね~?」
「そろそろさ、ターゲット…変える?」
…ター…ゲット?
ターゲット…標的…。
「飽きたゲームは…ポイッ!ね」
「じゃあさぁ…次は誰をいじめよっか?」
ゲーム…次…。
やっと分かった。
私がいじめられている理由。
それはゲーム。
いじめるというゲーム。
この人たち…いや、多分、クラスの大半が『ゲーム』をしてる感覚で、いじめられる人間の反応を楽しんでいるだけ。
私は今まで自分を責めていた。
自分のどこかに落ち度があると思っていた。
なのに、そんな事は関係なかった。
ゲーム。
ただ暇つぶしに、私はいじめられてきたということ。
信じ…られない。
涙も怒りも、すでに通り過ぎ、私の胸には不信感だけがこびりついた。
誰も、信じられない。
その日から私は本当の孤独を感じながら生きることになった。
いじめは続いた。
他にターゲットがいなかったのか。
そんな事は関係ない。
シカト…落書き…されても怖くなかった。
怖かったのは、みんなの心。
いつしか私は、表情すら捨てて教室に座っていた。
最初のコメントを投稿しよう!