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すでに私の心は死んでいた。
気晴らしや暇つぶし、そのために私はいじめられてきた。
私に理由があれば、それをなくそう。そう一生懸命だった分だけ、そこに理由などなかった事がショックだった。
あと半年くらいの中学生活。
私が心を閉ざしても、何も支障はなかった。
そのうち、私の態度や様子を気味悪くなってきたのか。いじめは自然消滅した。
しかし、私の中では、いじめは続いた。
誰も、謝らない。
誰も、話しかけない。
誰も、目を合わせない。
触れなければいいというのか。
関わらなければいいというのか。
ただ私だけがクラスの異物と化していた。
季節が過ぎていくと、みんな高校進学に向けての勉強に血眼になった。
そんな、ある日。
私の異変にようやく気付いた担任に声をかけられた。
それは進路相談の二者面談でのこと。
全く担任の先生は、自分のクラスでいじめがあった事に気付いていなかった。
それは私も分かってた。
分かってたから、助けや相談なんてしなかった。
先生に言えば言ったで『先生に告げ口した』とか言って、みんな、いじめるから。
「……すまない」
でも、もう良かった。告げ口したとか言われるなら言われても。
だから私は二者面談で「何かあったのか」と尋ねられ、事実を先生に教えてあげた。
どうせ、今更。
先生だって、聞いたところで居直るくらいしかしない。
そう思っていた。
「気付かなくて……」
しかし、先生は私と向き合い頭を下げた。
「……すまない」
意外だった。
先生が頭を下げるなんて予想してなかった。
「もっと早く、気付けば…」
私に『もっと早く教えてくれたなら』とは言わず、気付かなかった自分を先生は責めていた。
「……仕方ないです」
あまりにも先生が可哀想になってきて、逆に私の肩からスッと力が抜けた。
「仕方ない…仕方ないじゃダメなんだ」
頭を上げた先生の顔は真剣さに満ちていた。
そう言えば、確か、この先生ってクラスを受け持つの、私達が初めてだったかしら?
それを思い出し、なんとなく先生の気持ちが見えてきた。
多分、先生は、自分が担任になったら、いじめとか、そんなのがないクラスにしたい…って、思ってんじゃないかな?と。
「もう、いいです」
なんとなく人間不信になっていた自分がバカバカしくなってきた。
先生みたいな人が、この学校にはいた。
それだけで私には満足だったから。
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