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そして、やっと明日から夏休み。
今日は終業式。
私は普段と変わりなく電車に揺られ、学校最寄りの駅に着く。
適当に先生の話を聞いて、適当に時間を費やせば、もう夏休み。
どうせなら終業式なんていらないのに。
そんな事を考えながら学校まで歩く。
そうだ。
そう言えば電車の中でメールを受信してたんだっけ。
さすがに満員電車の中じゃ読めないからね。
私は歩きながら携帯電話を取り出しディスプレイを覗く。
そこには『未読メール1件』の文字。
一体誰が、こんな時間に?
そう思いメールを開くと、それは彼女からのものだった。
それと同時に私の足は校門の前まで来ていた。
しかし、そこには人だかりができ、ガヤガヤとした話声が渦を巻いていた。
「な、なに?!何か、あったの?」
驚きながら人の壁をかきわけ校門の前へ。
そこには黄色いテープで封鎖された校門があった。
KEEP OUT
赤い文字が黄色いテープに列をなす。
「……え」
何が起きたのか分からないまま、私は握り絞めていた携帯電話を再び除き、絶句した。
そこには『件名:今からね』と内容が映し出されている。
それは彼女からの言葉。
『私、死ぬから』
たった一言の言葉。
それに息を飲んだ私の肩をたたき、クラスメートの一人が耳打ちしてくる。
「なんでも、誰かが屋上から飛び降り自殺したんだって……」
凍りつく私。
もう一度、携帯電話に映し出されたメールに目を通す。
「まさか…そんな…?!」
黄色いテープの向こうに見える何人もの警察官は、すでに私の目には映ってはいなかった。
先生たちに誘導され教室に入るとみんなが色々な憶測を口にする。
それなのに、誰も彼女だけが教室にいない事に気付かない。
それが悲しくて、悔しくて、私は窓辺の席から見える校門に目をやった。
そこでは鑑識と呼ばれる青い服を着た人達が何かを運んでいた。
タンカーにブルーのシート。
それはサイレンを消した救急車に入れらる。
けたたましいサイレンが響き、救急車が走り出す。
それを聞いたクラスメートたちはドヤドヤと窓辺まで来て、身を乗り出してまで眺める。
これじゃ、見世物よ…。
ギュッと携帯電話を握り、同じくらい唇を噛み締めて私は机に顔を伏せるしかなかった。
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