会いたかった

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 そのまま中学を卒業するまで私は一人で過ごした。 だけど別に、どうってことなかった。 それはみんなを許したわけじゃなくて、諦めたから。 世の中には色々な人間がいる。 たまたま私は中学で嫌な人間に出会っただけ。 高校に行けば、そんな嫌な人間とも顔を合わさなくて済む。 そんな風に考えるようになっていた。 それは、とても寂しい事だったのかも知れない。 けど、そう思うしかなかった。私が私として学校に行くためには。  そうして中学を卒業し私は高校生になった。 高校生になったら、たくさんの友達。 たくさんの出来事。 もしかしたら彼氏なんて出来たり? そんな理想を広げた。 しかし、実際には違った。 なかなか人の輪に入れず、いつも孤立していた。 中学と、何も変わらない毎日があった。 あのいじめのせいで、私は人を信じるのに不器用になっていた。 目の前の人が信じるに価するかを考え、それを考えるのに必死で、いつの間にか一人ぼっちになっていた。 『こんなはずじゃ…』 肩を小さくしながら、お昼を食べる。 そうしているうちに、私は逃げ道を求めた。 まだ高校生になって数ヶ月しか経ってないのに、私の高校生活は重たい雲の下。 『私がいなくなったら、みんな、気付いてくれるかな?』 ぼんやりとした気持ちでクラスを眺める。 『私が死んだら、みんな、泣いてくれるかな?』 みんながカラフルに見えて、私だけがモノトーンに見えて、溜め息ばかりが口から出ていった。 結局、私は一人。 明るく描いた新しい生活は、単なる理想を写した絵。 現実にあるのは、迷彩模様の紙にポツンと小さく佇む影人間の私。 『死にたいな』 それは言葉でもなく、頭の中の声でもなく、ただ漠然とした気持ちとして心に引っ掛かり続けた。  そんな日々の中で、私はみつけた。 やっとみつけた。 友達。 高校生になって初めての友達。 そして、今までの人生でも初めての友達を。 それが、彼女だった。 明るくて元気。 食欲旺盛でニコニコ笑う。 何より、無愛想な私を笑わせようとしてくれた。 凍りついた心を、溶かしてくれた。 『ずっと私たち友達!』 声にはしなかったけど、そう信じられた。 中学のいじめ以来、初めて信じられた友達。 中学の担任の先生から二人目の、私が自然と信じることができた人間。 ただ無意識に私は、その存在が嬉しかった。
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