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それなのに、彼女は死んだ。
過去いじめられたこと。
人間を信じられなくなったこと。
その中で彼女と出会ったこと。
色々なことが駆け巡る。
「一人ぼっちは…寂しいよね」
中学の時に感じていた気持ち。
「だから…」
私はハサミを握りしめ、引き抜く。
「私を…」
とがった刃先をみつめ、いない彼女に語りかける。
「迎えに…来たの?」
私も、寂しいよ。
これから一人ぼっち。
二学期になったら、一人ぼっち。
私も、嫌よ。
一人ぼっちは。
だから、迎えに来てくれたの?
ごめんね。
怖がったりして。
ごめんね。
逃げたりして。
でも、今は分かるわ。
寂しい。
一人ぼっちになって。
離れ離れになって。
また一緒に…笑いたいな。
笑えるかな?
一緒に笑って、一緒に…今度は一緒に泣こうね。
私も、いくから。
もう、一人ぼっちにはさせないから。
…ね?
私も…私も…私も…私も…
ザー…
ザザ…
ザ……
ザザ…ザ…ザ…
ハサミを逆手に持ち、私はその先を喉元に向けていた。
その時だった。
耳に、あのノイズ音。
「迎えに…来たの?」
その音が彼女の存在と接近を知らせる。
しかし、音がおかしい。
瞼を閉じても、開いても、それは聞こえた。
ザザザ…
ザザ…
ザー…
それは、ある一ヶ所から聞こえる。
それは部屋の中。
それはテーブルの上。
「………」
見ると、そこには携帯電話。
確か、電源は切ってあるはず。なのにノイズ音は携帯電話から発されている。
それはまるで、私に携帯電話を手にしてと言うかのように。
「………」
気付けば私はハサミを置き、携帯電話を開いていた。
闇。
電話の切れた画面は、もちろん真っ暗。
…いや。
よく見ると何かが見える。
ノイズにまみれて、チラッ…チラッ…と、白いノイズが走る。
「?!」
その中に、彼女が現れては消える。
色を失った影のような彼女が、パッと現れては消えた。
しかし、怖くはなかった。
私を迎えに来た。
そう思い、私はただみつめた。
その瞬間――
不気味な瞳が画面に現れた。
そして――
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