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言いたい事はたくさんある。
聞きたい事もたくさんある。
だけど、何も言えない。
彼女も、何も言わない。
久しぶり。
そう言うのも、なんだかおかしい。
どんな顔をしたらいいの?
どんな言葉を口にしたらいいの?
さっき見た情景が彼女の最後の記憶なら、私は何を言えばいいの?
可哀想。
ううん、違う。
運が無かったのね。
違う…。
私は言葉を探した。
探したけど、みつかった言葉は気の聞かないセリフだった。
「良かった…自分から…自殺したんじゃなかったのね?」
だけど、これは本心だった。
彼女は自殺したんじゃない。
しようとはしたかも知れないけど、最後には思いとどまった。
自殺じゃない。
私の友達は自ら命を捨ててない。
それは私にとって、ささやかな救いだった。
彼女は何も言わず微笑んでいる。
少し気持ちの落ち着いた私は、意を決して尋ねたい事を並べた。
どうして死んでなお私にメールしたのか。
どうして私に、あんな事――あんな怖い思いをさせたのか。
私は口から出るままに彼女に尋ねた。
『………』
一息で言いたい放題に言った私を、それでも微笑み彼女はみつめるだけ。
「私…何か…した?」
仕方なく、一番言いたくなかった質問をしてみた。
それを聞くのは、何より怖い。
私が知らないうちに彼女を傷付け、その仕返しとばかりに、彼女があんな現象を引き起こしているのなら……全ては私のせい。
でも、自分のせいになるのが怖いんじゃない。
怖いのは、私のせいで彼女が悪い霊になったんじゃないかってこと。
私のせいで成仏できないのなら、彼女が不憫でならない。
『………』
祈るような気持ちで私が彼女をみつめると、静かに、ゆっくりと彼女は首を振った。
縦に……ではなく、横に。
溜め息と一緒に私の肩から何か重たいものが降りたような気がした。
しかし、そうなると、どうして彼女は私に怖い思いをさせたの?
結局、疑問が解決されていない事に首を傾げた私に、彼女はスゥッと手を伸ばした。
白い肌。
まるで陶器のような白い手。
それを眺めながら、私は無意識のうちに彼女と同じように手を伸ばしていた。
そして、私の手と、彼女の手が合わさる。
言葉だけが全てじゃない。
何より大切なのは気持ち。思い。
それを生む心。
合わせた手と手から光が発し、暗い闇を弾け飛ばしていく。
白い闇。
その中で彼女の心が私の心に流れこんでくるのを感じた。
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