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「…あ、でも」
涙を拭いながら、私はふと思い出した。
「メール…。一昨日、学校に向かう電車の中でメールを…」
私は一昨日、登校途中に受け取った彼女からのメールの事を先生たちに伝えた。
すると、担任を含め、その場の先生たちが互いに顔を見合わせる。
「それは、いつだって?」
「多分、私がまだ電車の中だったから……八時くらいでした」
首を傾げながら担任は腕組みをして「なんて内容だった?」と真剣な眼差しで尋ねてくる。
「え?えぇ…っと、件名が『今からね』で…」
そこまで言って私は口をつぐんでしまう。
その先、メールの内容、たった一言、その一言を口にするのが恐い。
「…内容は?」
「……私、死ぬから……」
静まり返る空気。
ドアの向こうでは、それまでと変わらない賑やかな声が響く。
「おかしいですね…」
今まで様子を見ているだけの教頭が校長と顔を見合わせ、担任以外の先生も動揺したように唸る。
「それは、いつ受信したんだ?」
首を傾げる私に担任は再度そのメールを受信した時間を尋ねてきた。
「だから、朝の八時ぐらい…多分」
「おかしいな…」
改めて聞き、担任は首を傾げた。
何が『おかしい』のか。
分からない私も首を傾げる。
「何が…おかしいんですか?」
その問いに答えたのは担任ではなく教頭だった。
「彼女が亡くなっているのを見つけたのは用務員さんなんだがね。それは朝の七時過ぎなんだよ。警察も、飛び降りたのは一昨日の深夜あたりだろうと……」
「え……?」
一瞬、教頭の言ってる意味が分からなかった。
私がメールを受け取ったのは朝の八時。
用務員さんが亡くなった彼女を見つけたのが七時。
警察が割り出した死亡時間は深夜。
「おかしいだろ。朝の八時には…もう…」
彼女はすでに飛び降りた後。しかも、数時間が過ぎた後になる。
そこで私は混乱しながらも、なぜ彼女がすでに亡くなっている時間に彼女からメールが送られてきたのかを考えた。
「もしかすると、携帯会社のコンピューター…サーバーが混雑していたとか」
担任が唸るように仮説を口にする。
本当なら深夜、彼女が飛び降りる前に送信したメールが、携帯会社のサーバーが混雑していたため私に送られてきたのは朝の八時になってしまった。
それなら、つじつまは合う。
しかし、そうだとしたら、本当なら私は深夜にメールを読んでいたはず……もしも、ちゃんと深夜に読んでいたら…。
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