第1章

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文芸部と言えば聞こえはいいが、ようは運動が苦手か嫌いで、帰宅部より、マシという程度で入部した者が多い。実際、うちの部は、幽霊部員が多く、毎日まじめに部室に顔を出してるのも彼か、部室に置いてある漫画雑誌目当ての私や部長ぐらいである。で、彼は今、秋の文化祭に向けての会誌づくりの資料を整理していた。部活としてきちんと活動してるのをアピールするために毎年文化祭に会誌を制作して配布する。昨年は幕末の郷土史を扱ったノンフィクション漫画を掲載したりしていた。まじめな内容なら、漫画でも先生方からは文句は出ない。出来が良ければ、近所の図書館に郷土史の資料として寄贈されることもある。 「やはり、部長、今年も、郷土史を調べてそれをまとめましょうか」 彼が部室の資料を整理している間、ずっとラノベを読んでいたやる気のゼロの部長がこちらを見る。三年の先輩で、そこそこ美人だが、残念美人という表現がこれほど当てはまる人も珍しい。髪はぼさっとしてて、以前、授業中に居眠りしててつけた寝ぐせそのままで部室に来たことがある。 「ん、この段ボールは・・・」 彼は部室の隅からそれらを見つけてダンボールの一つを床に置いて中身を確認した。同人誌が入っていた。いわゆる薄い本だ。いくら薄い本でもかさばれば重い、びっしりとその段ボールに詰まっていた。 「部、部長、こ、これなんです」 「ああ、見つけちゃった。それ、先輩たちの、置き土産。卒業するときに、自分の家に置いておけないからって、不要なBL本を部室に残していくのがうちの慣例になってて、それが、そう。確か、そこら辺の段ボール、みんなそう」 「これ、全部ですか・・・」 部室のロッカーと壁の隙間に宅配便の段ボールを流用したそれらが積まれている。 「それから、悪いけど、いくら整理しても、うちの部には謎がちりばめられた古い会誌はないからね。『気になります』とか誰も言わないから」 「あ、そうですか」 BL本が大量にある部室に来てたのかと思うとなんか急に彼のやる気がなくなった。 「でも、これ、早々に処分した方がよくないですか。こんなのが部室にあると学校側に知られたら、問題になりませんか」 「いや、処分は無理ね」 「どうしてですか」 「それはね・・・」
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