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「……手ぇ伸ばしたら何でもできるって信じてたのに、な」
珍しく暗い声が、私の耳を通り抜けた。
「はぁ…ちゃんと立ち上がれば?寝転がったまま、座ったまま手伸ばしたって届くわけないないじゃん。今の先輩、ネガティブ過ぎて先輩らしくない」
わざとらしく呆れて見せながら、私は立ち上がった。
ウジウジしている織田なんて…織田じゃない。
「…………」
「あー…もう。立ち上がっちゃえば、ほら…夜空の星だって掴めるんだよ?」
俯いてため息をつくウジウジ虫に、いい加減頭に来た私は……目の前にあった星を掴んで、投げ飛ばしてやった。
「…いてっ…何すんだよ。この素材結構硬いんだぞ!」
頭を押さえて涙目になる織田を見て、ニヤリと私は笑う。
もちろん私が投げたのは本物の星なんかじゃなく、文化祭の出し物として作られたプラネタリウム擬きの星。
案外しっかりした造りらしいが、吊してあった糸があんなに弱くて、文化祭中よく保ったものだな…と一人感心してしまった。
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