【 星に願いを 】

3/5
前へ
/33ページ
次へ
「……手ぇ伸ばしたら何でもできるって信じてたのに、な」 珍しく暗い声が、私の耳を通り抜けた。 「はぁ…ちゃんと立ち上がれば?寝転がったまま、座ったまま手伸ばしたって届くわけないないじゃん。今の先輩、ネガティブ過ぎて先輩らしくない」 わざとらしく呆れて見せながら、私は立ち上がった。 ウジウジしている織田なんて…織田じゃない。 「…………」 「あー…もう。立ち上がっちゃえば、ほら…夜空の星だって掴めるんだよ?」 俯いてため息をつくウジウジ虫に、いい加減頭に来た私は……目の前にあった星を掴んで、投げ飛ばしてやった。 「…いてっ…何すんだよ。この素材結構硬いんだぞ!」 頭を押さえて涙目になる織田を見て、ニヤリと私は笑う。 もちろん私が投げたのは本物の星なんかじゃなく、文化祭の出し物として作られたプラネタリウム擬きの星。 案外しっかりした造りらしいが、吊してあった糸があんなに弱くて、文化祭中よく保ったものだな…と一人感心してしまった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加