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僕の通うことになった高校は『明陣高校』
ここらじゃ有名な不良高校
不良が多いから地味な僕はきっと目立つ事なく卒業できるはずだ
僕は欠片も期待を抱かずに明陣の校門をくぐった
そもそもこの高校は入学式がない
あったところで参加する人はいないから3年ぐらい前になくなったらしい
まぁそれはそれで全然いいんだけど
教室に入って驚いた
だってカラフルなんだもん
みんなの髪が
僕は生まれてからずっと黒髪
でも光があたれば茶色に見える
ちょっとお気に入りの色
そして僕が教室に入っても誰も気に留めない
思った通り
みんなは僕に興味を持たない
過ごしやすい
ボーッとそんなことを考えていたらいつの間にか僕の目の前に僕と同じ普通の子がいた
「よかったぁ…僕以外にも普通の人がいて……あ、僕は佐々木貴斗(ササキタカト)!!君は?」
人懐っこい感じの子だった
僕より背が高いのに少したれ目気味で愛嬌のあるモテそうな奴
「あぁ……僕は咲田。咲田理久(サクタリク)。こちらこそよろしく」
マスクに伊達眼鏡
こんな怪しい奴普通の人って思うのはおかしい
頭が弱いのか?
「理久って呼んでいい?僕も貴斗でいいよ!!」
なんかコイツぐいぐい来るんだけど…
慣れない距離感に少し焦る
こんなに話しかけてくれる人なんてそんなにいなかった
やっぱり心のどこかでは寂しくて仕方なかったから
嬉しさもある
「理久はさ、何でこの高校にしたの?僕は家から近かったからここにしたんだけど……」
それは至極当たり前な質問
きっとどこかでされると思っていた
だけど少し口ごもる
「いや……えっと…」
思わず俯いてしまった
実際に直面すると何て言ったらいいかわからない
頭の中がグチャグチャになる
「っ……」
何も言えずにいる僕
みっともなくて仕方ない
でも佐々木はそんな事思ってなかった
「あ、絶対に知りたいってわけじゃないから!!理久のタイミングで話してくれたらそれでいい!!言いづらい事あるもんね!」
そうやって柔らかく微笑む佐々木……いや、貴斗は信じても大丈夫な人だってそう思えた
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