【1】遺能者

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慌てて離れた俺を見て、雪也が悲しそうな顔をしたのが見えてしまう。 一瞬だったけれど、見逃すことが出来なかった俺はなぜか雪也を抱き寄せていた。 “瑞樹?えっ!?何・・・?” 悲しそうな顔が頭から離れなくてそのまま抱きしめていた。 なぜか今、雪也を離してはいけない気がして。 “瑞樹、お願い、離して・・・。瑞樹が好きなこと、ばれちゃう。俺、このままじゃ、瑞樹を押し倒してしまう。抑えなきゃ・・・本当は今すぐキスしたい。でも・・・瑞樹は俺を友達と思ってるから。俺の好きと瑞樹の好きは違うのに。こんなこと思ってるなんて知られたら・・・嫌われたくない・・・だから・・・お願い、離して。” 雪也の身体が強張るのを感じた。 今のは・・・雪也って俺の事好きだったのか!? やばい。 聞いちまった。 どうする・・・俺。 知らないふり出来るかな。 そっと抱きしめる力を緩めると雪也が離れた。 タイミングよく母がドアをノックをして入ってくる。 「飲み物持ってきたわよ。」 「ありがと。」 「ありがとうございます。」 お礼を言って母から受け取る。 雪也のお礼に母はニッコリ微笑んで「ゆっくりしていってね」と言ってドアを閉めて下に降りて行った。 テーブルに置いて座るけれど、俯く雪也の顔が赤くなっていることに気づく。
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