【1】遺能者

11/38
前へ
/429ページ
次へ
雪也は今の俺の恋愛対象に、性的対象になる。 けれど、好きだから付き合いましょう、というふうに簡単にはいかない。 今の俺には雪也がパートナーになってくれない限りは、キスすら出来ない状態だ。 それにパートナーになるには、雪也に今の生活とは違った形をとってもらうことになる。 簡単に巻き込んでいいわけがない。 「瑞樹、これ休んでた間のノートとプリント。渡すの忘れるとこだった。」 「ありがとう。5日分か。お前字きれいだよな、見やすいし。助かるよ。」 俺が雪也を見て微笑んで言うと、顔が赤くなっていくのが見えた。 抱きしめてから変なんだよな。 あれは雪也の心の声であって、直接言ってきたわけではない。 俺はさり気なく雪也を観察することにした。 俺の視線に気づいては顔を真っ赤にして俯き、俺が他のことに集中し始めると視線を感じる。 雪也からの突き刺さるような視線を感じ、胸が締め付けられる。 「瑞樹って休むことあまりないからびっくりしたよ。」 「確かに休んだことないかもな。俺も自分でびっくりだ。雪也、ご飯食べていきなよ。聞いて来るから待ってて。」 泊まらせるわけにはいかないけれど、ご飯くらいはいいのではと思い、雪也に言って部屋から出る。 あのまま部屋にいたらヤバかった。
/429ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加