【1】遺能者

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俺を好きだとキスしたいと雪也は思っていた。 それは泊まらせたら寝ている間にでもキスされてたという可能性があるということだ。 俺が普通の人間ならいいけれど、って俺が普通だったら男同士はあり得ないと思うのかもしれない、そうじゃなくて、今の俺にキスしてきたら、雪也が大変なことになる。 母さんに「雪也も夕食大丈夫?」と聞くと「大丈夫よ」と返事が来た。 俺は伝えるために平静を装い、雪也の待つ部屋に戻る。 雪也はいつから俺を好きだったんだろう。 一緒にいることは多かったはずなのに今まで全く気づかなかった。 部屋のドアを開けると雪也は宿題を広げていて、その横顔にドキっとする自分がいる。 気持ちを落ち着けて伝えることを雪也に言う。 「夕食大丈夫だって。食べていきなよ。」 「ありがとう。」 夕食を終えた俺は雪也を途中まで送っていくことにした。 病人なんだから、という雪也をなんとか宥めて無理やりに外にでる。 もう外は暗いし何があるかわからないから心配にもなるじゃないか。 こう思う俺は少しずつ雪也を恋愛感情で好きになり始めているのかもしれない。 誰かを恋愛感情で好きになったことがない俺にはまだはっきりとはわからないけど。 「明日、大丈夫だったら遊びに行くよ。」 「わかった。無理しないでね。ここで大丈夫だから早く帰って休みなよ。」 俺は頷いて一度そこで帰るふりをした。
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