【1】遺能者

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すぐに帰れるわけがないだろ、お前が無事に家の中に入るのを確認してからだ。 俺はそっと雪也の後を気づかれないように一定距離を保ってついていく。 何気に俺ストーカーじゃないか? いや、そんなことはない。 雪也が無事に帰ればそれでいい。 自分に言い聞かせるようにして雪也の数メートル後ろを歩く。 俺は雪也が玄関を入りドアが閉まったのを確認して帰路についた。 何やってんだろ・・・俺。 ため息をつきながら家まで歩いて、雪也から聞こえたことも含めて考える。 歩きながらは危険か。 でもなぁ・・・。 夏休みまで、あと1か月半。 雪也がもし俺の話を聞いて真実を知っても俺を好きだというのなら、あいつをパートナーにしてもいいのかもしれない。 それまでに俺が雪也に恋愛感情を抱くかだけど。 俺の今日の行動からして確実に好きになっていってることは間違いないだろう。 雪也に触れるたびに好きとか言われたら俺の心臓は持ちそうにない。 それほどあいつから聞こえる声は、俺の心に響いてきて落ち着かなくなる。 雪也は俺に告ったら、振られるとか思ってるんだろうな。 嫌われたくない、とか言ってたもんな。 声に出して聞いたわけではないけれど心の声は本心だ。 考えていたら家に着いていて、中に入り「ただいま」と言って部屋に戻る。 今すぐに出せる答えじゃない、考える必要はある。
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