【1】遺能者

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その顔には涙の痕が残っていて、哀しそうで、辛そうで、かける声は何も浮かばない。 俺たちのほうを向いた男はベッドに腰をかけ、俺たちに言った。 「見られちゃったね。他の人には黙っていてくれるかい?その代わり話せることなら質問に答えるよ。」 俺と赤坂は初めて見たパートナーの消える光景にまるで夢を見ているかのように何も言えないままだった。 遺能者については詳しいことは公開されていない。 情報は直接やり取りされるため、紙のような物では残されない。 それほど遺能者の記憶力は優れている。 俺が聞きたいことは、雪也と小谷がいる今は聞けないため後回しになる。 「あなたはいったい・・・?さっきの人は・・・?」 疑問を口にしたのは小谷だった。 遺能者の俺も、何故こうなったのかわからない。 一般人の小谷は更にわからないだろう。 「遺能者と呼ばれる人が存在することは知っているかい?その名の通り人並み外れた能力を使えるわけだけど。」 「知らないです。初めて聞きました。」 「俺も知らなかった。」 小谷が返事をして、雪也が同じく知らないと言う。 自分たちが遺能者である俺と赤坂は、何も言わず聞くだけにした。 「そうか。遺能者は生まれつき能力を持つ者と、生まれつき能力を持つ者によって遺能者になる者の2種にわかれる。前者をオリジナルのOタイプ、後者をイミテーションのIタイプと呼んでいる。これは公開されている情報だよ。俺はOタイプ、さっき消えたのはIタイプである俺のパートナーだ。」
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