【1】遺能者

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聞いた内容に、身体が震えた気がした。 “何故父親が遺能者で、母親が一般人だと、能力の覚醒が不完全になるかはわからない。そして、不完全な者を、完全な遺能者にする方法もわかっていない。俺のパートナーになってくれた彼は、全てわかった上で俺のパートナーにしてくれと言ってきたんだ。拒めなかった俺も悪いんだが、もしかしたらという思いもどこかにあったんだろうね。” そう語る男は、また哀しそうな顏をした。 そして手を離して話を続ける。 「俺の末路はわかっている。パートナーがいて長生きしてたようなものだ。聞いてくれてありがとう。もう俺は行くよ。良い相手見つかるといいな。」 「俺たちの方こそ、ありがとうございました。」 「話してくれて、ありがとうございました。」 俺たちはそれぞれ握手をして、男が去っていくのを見ていた。 「なぁ、赤坂。今日お前んち行っていいか?」 「いいよ。」 今はそれ以上の言葉が出てこなくて、保険医が戻ってきて声をかけられるまで立ち尽くしていた。 教室に戻ると、今日は授業にならないために帰っていいことになっていたようだ。 明日以降は、連絡が行くまで自宅待機と言われ、俺はそのまま赤坂の家に行くことにした。
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