【1】遺能者

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帰ろうとしたところで雪也に捕まった。 まだ能力のコントロールが上手くいかない俺は触れてしまうと自然と心を読み取ってしまう。 あれから出来るだけ雪也には触れないようにはしてきたけれど、両腕でガッチリと腕を掴まれてしまうと離れようがない。 「雪也、どうした?」 「瑞樹、今日このあと家来ない?」 “最近、瑞樹が遠く感じる。気付かれたわけじゃないよね・・・。やっぱり知られたら気持ち悪いと思われるだけだし。でも・・・” やっぱり制御しきれてない。 本当は気持ち悪いと思うわけないって言ってあげたい。 俺自身が同性だけしか恋愛対象に、性的対象にならなくなってしまったのだから。 「ごめん。今日はもう予定あるんだ。行ける時連絡するよ。」 「そっか・・・。」 “苦しい・・・どうしたら諦められるんだろう。俺がこんな思い抱いてるなんて知られたら・・・。伝えて嫌われて離れたほうが諦めがつくのかな。” こんな場所にいたくないと思っているのか、気付けば教室は誰もいなくなっていた。 雪也の思いに俺は胸が締め付けられる。 俺が雪也を辛くさせてんのか・・・でも、諦めてほしくないと思う自分がいる。 「そんな顔するなって、な?近いうちに行くから。」
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