【1】遺能者

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珍しく瑞樹が学校を休んだ。 今まで病気で休むことなんてなく、熱を出したことのなかった瑞樹は、用事で休む時は必ずといっていいほど俺に教えてくれていた。 珍しく風邪かな?なんて思いながら休み時間にメールを入れたけれど、返事は放課後になっても返ってこなくて心配になる。 高熱とかで相当きついのかな。 見舞いに行くべきか、やめておくべきか。 悩みに悩んで行くだけ行ってみようと決めた。 「熱高いとか、感染症とかだったら会えないよなぁ・・・。」 ため息をつきながらコンビニに寄って、ゼリーやプリンなどをいくつか買った。 瑞樹の家の前にきて勇気を振り絞ってチャイムを押す。 「はーい。」と中から元気な女性の声が聞こえて、玄関のドアが開いて中から出てきた年齢からは若く見える瑞樹の母親は、俺を見て少し驚いた顔をした。 「雪也君、来てくれたのね。でも、今は瑞樹には会わせることは出来ないの。まだ数日学校を休むことになるとは思うから、落ち着いたら瑞樹に連絡させるわ。今日はごめんなさいね。」 「わかりました。これ食べられそうならあげてください。」 瑞樹のお母さんは「ありがとう」と言って中へ入っていった。 会えないほど瑞樹は酷い状態なのだろう。 連絡が来るのを待つしかないと思って俺は家に帰った。
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