【1】遺能者

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ぎこちなくも少しずつ話しながら、荷物を抱え、昇降口に向かう。 雪也からは遺能者をどう思ったかは一言も聞けていない。 ただ、なんとも思っていないだけなのか、それとも、恐怖があるのか。 でもさっき触れ合っていた時は恐怖に関わることは何一つ聞こえてこなかった。 それならば、悪くは思っていないと思っていいのだろうか。 保健室では興味は示していた。 考えてもわからないな・・・。 聞ける機会があればいいんだけど。 昇降口には赤坂と小谷が談笑していた。 あいつらも仲良いな。 「ここにいたのか。ごめん、待たせた。」 「ん?いいよ。」 赤坂が小谷との会話を止めて俺に視線を向けた。 小谷が雪也の手を引いて、靴を履き替えて外に出て行ったのを俺たちは見送る。 「あれ、いいのか?」 「いいよ、いつものことだから。行こうか。」 俺たちも靴を履き替えて、赤坂について行く。 なんとなくしか赤坂の家は知らない。 このあたりは来た事あったかな、なんて思いながら歩く。 「着いたよ。」 そういう赤坂の目の前の家の門には【赤坂】と名前が書かれていた。 見ただけでは普通の家。 俺の家とあまり変わらないな、と思った。
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