【1】遺能者

4/38
前へ
/429ページ
次へ
********* 早朝、目が覚めて起き上がろうとしたら金縛りのように身体が動かなくなっていて、どこか自分の身体じゃないような感じがした。 どうやらまだ外は明るくなっていないようで、夜中なのか明け方なのかわからず、確認しようにも身体が動かないせいで、携帯を見て時間を確認することは出来ない。 少しずつ明るくなってきていることを思うと、明け方なのだろうとは思う。 頭のなかでどこからか湧いてくる大量の情報を整理できていない自分がいる。 ただボーっと横になっているだけで、完全に明るくなった頃から母さんが時々様子を見に来ているだろう気配を感じることはあった。 どれくらい時間がたったのか、やっと湧いて出てくる情報が止まった。 後は整理するだけだと思うけれど、どうしたものかと悩む。 お腹がなる音を聞いて朝から何も食べていないことに気づき、下に降りてダイニングのドアを開けるとそこには母さんが寛いでいた。 「あら。もう大丈夫なの?」 「大丈夫というか、まだ頭の中ぐちゃぐちゃだけど。とりあえず腹減った。」 その言葉に母さんは笑いながら食事を出してくれた。 朝になっていつまでも降りてこない俺を起こしに来た母さんは、俺の状態を見て学校に電話を入れてくれたらしい。 父さんは滅多に家に帰ってこない人だけど、母さんは特に何も思ってないようで、普通に楽しく生活しているように見える。 よくドラマとかに仕事ばかりで家に帰ってこない父親に、母親が愛想をつかして離婚とかあった気がすると思ったけれど、今のところこの家に関しては何もないようだ。
/429ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加