【2】偶然の奇跡

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「朝出てきた人がお母さんでしょ?」と付け足すと、桐生は頷いた。 桐生にいろいろと説明することがある。 あの男が言っていたことも話す必要があった。 「桐生の家は母子家庭だと聞いたけど、お父さんに会ったことは?」 「父親は知らないな。母親ですら俺にあまり関わろうとしない。義務で育ててくれたんだろうけど。殆ど家にいないから話すこともないんだよ。」 俺らの予想は当たってると思う。 母親が遺能者ならあの場で俺らの確認をとって、家に上げるかを戸惑ったはずだから。 実際俺の母さんも家に誰も入れなかった。 「遺能者は遺伝で生まれるんだよ。桐生の場合父親からの遺伝だろうね。」 「そうか。でも、何か足りない気がするんだ。何かはわからないけどな。」 不完全てことは自ら気づくものなのか? そういえばあの男も自分のことを詳しく知っていた。 「そのことも今から説明するよ。落ち着いて聞いて。」 「今更何聞いても驚かない気がする。」 確かにそうかもしれない。 突然日常が変わるのだから。 慣れるまでも時間がかかる。 不完全だと能力だけでなく、情報にも欠落があるのかもしれない。 完全な状態にするために何が必要かは今はわからない。
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