【2】偶然の奇跡

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「やっぱりそうか。なんとなくは思ってた。」 少し寂し気に笑いながら言う桐生は気づいていたのだ。 「父親が遺能者でも、母親が一般人ではなく遺能者なら、不完全ではないんだよ。」 「父親が遺能者って稀なんだろ?母親まで遺能者なんてそう簡単に出てくるわけないんじゃないか?不完全じゃないってわかるのか?」 ここにいるんだけどな、とは言えるはずもなく、俺以外でもどこかに存在している気はする。 俺の存在は一部の遺能者以外に知られてはいけないため、簡単には言うことは出来ない。 「最近話した男性が言ってたんだよ。母親が遺能者なら父親が遺能者でも不完全にならないって。いろいろ調べたんだろうね。その男性と話した後に決めたんだ。もしかしたら俺たちにも何か調べられることがあるんじゃないかって。だから、不完全な状態を完全にするために何が必要なのか調べていこうと思う。桐生はどうする?」 俯く桐生が顔をあげて俺たちを見る。 その表情は何かを決意したかのようで、もちろん不安もあるだろうけれど、解決すれば不安もなくなるだろうと思う。 「俺も調べる。このままパートナーを作っても辛くなるだけだ。だったら、少しでも自分でやれるだけやって納得したい。変わるならそれはそれでいいことだし。」 「決まりだな。これからよろしく。」
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