【1】遺能者

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来るまでの時間が早いなと思い、雪也は授業が終わってメールを見てすぐ来たのかと思った。 返事のメール書きながら歩いてたんじゃ・・・。 ほんとに危なっかしいやつだな。 母が出たらしく、俺が部屋から出ると雪也は階段を上がってきていた。 「瑞樹。よくなったみたいでよかった。あっ、今日差し入れ買うの忘れてた。」 「毎回買ってこなくて大丈夫だよ。気にすんな。」 部屋に入りドアを閉めたら雪也は俺に抱き着いてきた。 そこまで心配されることじゃないんだけど。 騙しているみたいで、言える人がいないことが少しだけ辛くなる。 「でも瑞樹が家に来る時いつも買ってきてくれるでしょ。」 “やっと会えた” 「だから大丈夫だって。心配かけてごめん。月曜の差し入れもありがとな。」 やっとって1週間だけど、何か用でもあったのか? 覗き見してるような状況に良心が痛むけれど、この能力に関しては自分で制御出来ない限り、離してもらわないことには聞こえ続けてしまう。 「大丈夫だよ。瑞樹が元気になったのならそれでいいから。」 “瑞樹・・・何もなくて本当によかった” 「俺はもう大丈夫だよ。来週からは学校行けるはずだから。」 雪也が何を考えているのかわかるかもしれないと思ったけれど、心配してくれたことしかわからないままだ。 男しか恋愛対象にならなくなった俺は、これ以上抱きつかれていると危険だと思い、雪也を離した。
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