Omen of death

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ぼくは、気が付くと真っ白い光に包まれていた。 だけど、ここは舞台の上でもなくドラマなんかでよくある取調室とかでもない。 ただの、閑静な住宅街。その路上で、ぼくは光を一身に浴びている。 タイヤとアスファルトの擦れるキキーッという耳障りな音が何も曲をかけていないイヤホン越しに聴こえ、光の源が車のヘッドライトだと認識した瞬間、時間の流れがゆっくりになったような錯覚に陥る。 生命の危機に脳が処理情報を増やしているからなのか、ゆっくりとしたその流れでぼくは今自分を轢こうとしているのが有名社の赤のスポーツカーであることを認識するくらい、余裕があった。 そんなことしている暇があるなら足を動かすなりしてここから逃げ出したいところだが、生憎脚はいうことを聞かない。縫い付けられたかのように一歩も動けない。
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