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少女は、見ていた。
宙高く舞う少年を。
逃走する赤い車を。
轢き逃げ現場から200mほど離れたマンションの屋上。
そこに、少女はいた。
明るいオレンジ色の髪を夜風に靡かせながら、少女は表情を変えずに咥えていたロリポップをガリッと噛み砕いた。
それが合図だったかのように、事故を見ても微動だにしなかった彼女は床に置いていた鞄を拾い上げると、当たり前のように屋上の手すりを越えて一歩踏み出す。
当然のようにその先には何も無く、少女は重力に抗うことなく落ちていく。
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