Do not let this hand

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迷いながらもライブハウスに辿り着く。 胸の高鳴りは激しさを増し少しの吐き気が襲う。 数人の革ジャンの男が路上でタバコを吸っている。 「あの…すみません…」 「あ?」 怖そうな顔を上げた男。 「cBaってまだやってますか?」 男は腕時計を見ると私に首を振る。 「cBaは19時から。」 「っ!ありがとうございます!」 急いでライブハウスに駆け込む。 フロアのドアの前にチケットカウンターがある。 「えっと…」 「チケットある?」 「いえ…」 「じゃあ当日券、ドリンクチケット込みで3,500円。」 お財布からお金を払うとドリンクチケットを渡される。 「高校生やよね?酒飲まんといてよー!」 「はい…」 重たい扉を押し開ける。 むあっとしたタバコの煙とお酒の匂い、大音量のBGMが懐かしい。 流石に制服の私は一人浮いている。 注目を浴びて壁に寄り掛かる。 物珍しそうに眺めている革ジャンの男達の中にさっきの金髪の女性がいた。 「あれ?さっきピアス拾ってくれた子やよね?」 「はい…」 「cBa好きなんや~。」 「…はい。」 にっこり微笑むその人はタバコに火を点けた。 「制服で来るなんて目立つやん、羨ましいわ。」 プラスチックカップに入ったビールを差し出された。 「えっ?」 「飲めんの?」 「…はい、ごめんなさい。」 ふふっと笑うと私の前から立ち去る。 BGMが徐々に音量を上げると、座り込んでいた人達が一斉にステージに詰め寄る。 始まるんだと感じた。 東京のライブハウスよりかなり広いけど、あっと言う間にステージの前はぎゅうぎゅう詰めになっている。 人の群れから少し離れてステージを見守る。 フロアが暗転すると心臓の高鳴りが一気に増した。
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