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「……貴方でしたか、木原課長」
口調は穏やかだけど、地を這うような低い声。
怒りを必死に抑え込んでいるのがひしひしと伝わってくる。
木原課長は右足を軽く引きずりながら、こちらに近付いてきた。
「佐伯主任……。ドアが壊れているようだけど。物騒なことするもんだね顔に似合わず。何かあったのか?」
課長を捕らえていた眼光を更に鋭くさせ、ツカツカと課長に近付いていく翔真。
シャツの胸元をグイッと掴み、堂々と言い放った。
「元上司だからって、セクハラしていいと思ってるのか?金輪際まひろに…俺の女に手を出すんじゃねーよ!!」
……………ちょ、ちょっと翔真!?
課長の胸元から手を離し、代わりに私の手を掴んだ翔真。
「帰ろう、まひろ」
ガヤガヤと騒いでいる野次馬を掻き分けるようにズンズンと進んでいく。
人だかりから少し離れた場所で私たちを待ち構えていたのは、宮本課長。
「よう、お疲れ!お二人さん」
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