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自分で動けそうにないそいつの膝と背中に腕を通して持ち上げると、頭を俺に寄り掛からせて大人しくしている。
まあ、いつもの事だから特にお互い感想もない、と言ったところか。
淡い桃色のベッドに寝かせ靴を脱がせると、丸越は長く息をはいた。
「水、飲むか」
「うん」
俺は返事を背中に聞きながら、小型冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しグラスへ注<つ>ぐ。
「せんせ……、飲ませて?」
いつになく甘えた声を出すそいつを鼻で笑って戻ると、眉間にシワを寄せて俺を見上げていた。
「無理して飲まなくて良いんだぞ?」
「ん~ん、先生のいじわるっ……」
早く寄越せと伸ばす手を掴み、焦らすようにゆっくりとグラスに口を付ける。
俺の口に流れていく水を見て、期待の色を強めたそいつを横目で楽しんでから、俺は口を閉じた。
それから、含んだ水を食道へ送ることなく丸越へ顔を近付けて、そっと唇を重ねた。
恐る恐る口を開ける丸越に、俺も応えるように口を開く。
重力に従って落ちていく水を追って舌を丸越の中へ進行させた。
部外者の侵入に微かに顔を強張らせた丸越だが、コクン、と喉頭隆起(喉仏)を下してそれを受け入れる。
15℃の水で冷やされた俺のものと、36.4℃の丸越のものが絡むと、いつもより艶かしい音を奏でた。
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