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旅館での仕事は、時間に追われるおかげで、あっという間に昼を過ぎて、俺たちのバイトの時間は終わった。
その間、俺も柊翔も、まともに話をする暇もなかった。
「お疲れ様~。」
女将さんが、にこやかに声をかけてくれた。
「いやー、旅館のお仕事が、こんなに大変だなんて、思いもしませんでした」
そう言いながら、楽しそうな顔をしている柊翔。
「でも、俺、すごく楽しかったです」
俺がそういうと、女将さんは、すごく嬉しそうに笑ってくれた。
「それじゃ、午後からはお客さんとして泊まって行ってね」
そう言って部屋の鍵を渡すと、次の仕事のためにさっさと事務所のほうに戻って行った。
「俺、来年も来たいかも」
思わずつぶやくと、
「何、バイトで?お客として?」
「バイト。今回は一日しかやらなかったし、本当に、力になれたのかわかんないけど。次来るなら、もっと長く仕事してみたいなって」
「そっか・・・来年だったら、もっと、要と遊ぶ時間できると思ったのにな」
ちょっとだけ拗ねたような顔の柊翔に、
「そのためには、大学受からないと、じゃないですか」
トンッ、と、柊翔の背中を軽く叩いた。
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