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旅館から海まで歩くと15分くらい。海の匂いが段々と強くなってくる。
「潮風が気持ちいいな」
「はい」
俺たちの脇を子供たちが駆け抜けていく。
「おお~、元気いいなぁ」
「なに、おっさんくさいこと言ってるんですか」
「なんだと」
「だって、そんなセリフ、おっさんみたいじゃないですか」
「こらっ!」
俺たちも、子供たちの後を追うように走りだした。
こんなに思い切り走るのなんて、体育の授業以外にしなくなった。
笑いながらだから、もう、息があがってくる。
チビの頃は、もっともっと走れたのに。
「つかまえた!」
柊翔に首をホールドされる。
体温が熱い。
そして、大好きな柊翔の匂いがする。
「逃げられないぞっ」
グッと顔を近づけて言う柊翔の優しい瞳に、釘付けになった。
―――その時。
「あ、あれ~?」
聞き覚えのある声が……した。
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