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「良い子の皆さん、こんにちは。悪い子だって言い張る子もこんにちは。お昼の校内放送の時間が参りました。本日のアナウンスはわたくし、絵空ことこが務めさせていただきまっ・・・へっくしょん!!」
お弁当の匂いが充満し、生徒のおしゃべりがあちらこちらで飛び交う教室。備え付けられたスピーカーから気の抜けたアナウンスが響き渡る。
「ずるずる・・・失礼。一年生方々、ご入学おめでとうございます!!ふるかわ魔術育成高校へようこそ!
あなた方はこの国の、魔術の発展成長に貢献できる人材になっていけるよう、お互いに切磋琢磨して高校生活を歩んでいってくださいね!」
緊張感なんて縁のない、鼻から抜けるような声で発せられたアナウンス。おそらくこの場にいる少女、ユーリの耳には届いていない。
なぜなら彼女はひどく混乱していたから・・・。
「恋もお勉強も魔術も!全部応援します!心配無用!あなたの魔力と記憶は本校が全て管理!
個々の魔力を統合させ、一箇所に集め、魔術の出入庫を生成!さらに不安を生じる記憶は全て削除します!これで悩み無用!」
生徒たちが当たり前に浴びていた、窓からの温かい日差し。日が陰ったと思いきや次第に空は薄暗くなり、青から灰色、薄紫から深い紺色の空へと急激に移り変わった。
「さあ生徒の皆さん、本校は空間転移を完了し、現在夜の22時13分22秒、私たちの住む世界のパラレルワールド誕生です!
ですがこれは皆さんの統合した魔力の活用実験にすぎませんーーー」
ユーリは望んでなかった。
いやでいやで堪らないのだ。
けれども逃げられない。
(だって私はーーーー。)
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