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ぼんやりとしと意識の中で低い、その声が私の名前を呼んだ気がした。
「ん……」
開け切らない瞼の裏で光を感じて、朝かとぼんやりと思う。
まだ目が覚めない私は眉を寄せて、身じろぎをする。
起きたく無い。
「こら朔良」
「・・・・」
「朔良」
「・・・・」
「・・・・」
またその声が聞こえて。
「んんー!」
かと思えばペシリと額を叩かれた。
「…痛い」
「いい加減起きろ」
「…ふぁぁあ」
ぎゅうときつく瞼を閉じて、ゆっくりと開いて。
一番最初に目に入ったのは真っ黒の双眸。
「…おはよ、綾都(アヤト)」
冷たいと思ってしまうほどに綺麗な顔立ち。
こちらを見つめる、吸い込まれそうな黒の目。
カーテンが開けられた窓から射し込む朝日に照らされ、輝く髪。
その彼の全てに深い安心を覚えて、ふわりと自然に口角が上がった。
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