第1章

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 この辺りは田舎だ。家と家の間は100メートル以上は離れているし、商店街や店は学校周辺に集まっている。だからその地域を離れるとほとんど人の気配がなくなる。僕は土手を一人歩きながら辺りを見回す。のんびりとした空気が流れていた。僕はこの田舎が気に入っていた。 この町の中心を流れている川に沿うようにある土手を歩いていくとニュータウンと呼ばれる住宅街にたどり着く。ニュータウンといっても今はほとんど住んでいる人はいない。僕が産まれる少し前にニュータウンができたころはたくさんの家族がこの場所に移り住んできたらしい。でも、今は住んでいた家族の子供達はこの町を出て少し離れた大都市に移り住んでいる。それに従ってここに住んでいた親たちも子供に引き取られるようにこの町を出て行ったらしい。だから、この辺りはかなりの数の空き家があった。人通りのほとんどない道の電柱に人探しの貼り紙がされていた。小学生の姉弟の行方が分からなくなっているらしい。風で剥がれそうになっているのを横目に僕は空き家の一つに足を踏み入れる。部活動や勉強をまじめにやっていない僕にも熱心になるものがないわけではない。趣味と言ってもいいことが一つある。  人が住まなくなった家は荒れるのが早い。この家も数年前までは人が住んでいたのに今ではもう十数年人が住んでいないように見えるほど荒れていた。  僕が家に土足で上がり込むと各部屋からわらわらと集まってくるものがいた。それは、猫や犬だった。引っ越しの際に捨てられたのか、それとも、もともと野良だったのかはわからない。そんな大小の動物たちがこの辺りにはかなりの数いる。 僕は部屋の中心に置いてあるプラスチック製の容器に買ってきた食べ物を入れる。割れ先に食べようと近づいてくる者、自分のペースを崩す気はないらしくゆっくりと近づいてくる者。様々だ。  僕はこういった野良の動物たちに餌を与えるのを密かな趣味としていた。あまり褒められた趣味ではないと分かっている。野良の動物に餌を与えるというのは色々な弊害があることも自覚はしている。それでも僕はこれらの動物の世話をするのを趣味にしていた。  ただ単に憐れんでいるのかもしれない。それを救うことで優越感に浸っているのかもしれない。まぁ、それはそれで別にいい。   一通り全員に餌を与えると僕はしばらく適当に動物と触れ合ってから帰路についた。
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